首里を中心に沖縄で愛される「まんじゅう」3選

独特の文化が現代にも根付く沖縄。そんな沖縄で愛されている菓子は琉球王朝時代から伝わる伝統菓子や、アメリカの影害を受けた輸入菓子、ローカル菓子などさまざまですが、昔から行事ごとに欠かせない菓子として、人々に親しまれてきた沖縄ならではの「まんじゅう」が数多くあります。

今回は琉球王国の中心だった首里城のある那覇市首里周辺や沖縄県内で昔から愛されてきた3種類のまんじゅうを紹介します。

縁起物として愛されてきた「のまんじゅう」

白い生地に大きく書かれた赤い「の」の文字が印象的な「のまんじゅう」は、首里はもちろん、沖縄県内でもよく知られているまんじゅうです。最近では、箱入りの土産品やストラップ、キーホルダーなども見掛けるようになりました。

「のまんじゅう」は100年以上の歴史を持つといわれていますが、現在も取り扱う店舗としては、戦前から作り続けて70年以上の歴史を持つ首里久場川町の「ぎぼまんじゅう」が最古のようです（諸説あり）。

寺に参詣をする際に供え物を近くでもらえるようにと、首里儀保町の盛光寺の敷地内で販売されていましたが、2004年の寺の改築時に首里久場川町へ移転しました。

鮮やかな「の」の字は「熨斗（のし）」を意味しており、昔から祝いごとによく出されてきました。法事用には「の」を入れずに販売しています。

大人の手のひら程の大きさがあり、厚めの皮はふかふかで中には上品な甘さの粒あんがぎっしりと入っています。まんじゅうの下に月桃（サンニン）を敷いて蒸すため、清涼感のある香りも一緒に楽しめます。

【ぎぼまんじゅう】
住所：沖縄県那覇市首里久場川町2-109-1 ぺリエールHIGA 1-A
電話：098-884-1764
営業時間：9:00～売り切れ次第終了
定休日：日曜

160年の歴史を持つ素朴な味わいのおやつ「山城まんじゅう」

2つ目は首里城近くの首里真和志町に店を構える「山城（やまぐすく）まんじゅう」です。第2次世界大戦で資料が焼失してしまい正確な年数が不明ですが、160年以上の歴史があるとされています。現在は6代目の山城杏奈（やましろ・あんな）さんが伝統の味を引き継いでいます。

「山城まんじゅう」は通常のふかふかした柔らかい皮に包まれたまんじゅうとは少し違い、小麦粉と水だけで作った弾力のある薄い生地の皮が特長。小豆に砂糖と水あめを加えて長時問煮込んだあんを平らに伸ばし、皮に包みます。

「山城まんじゅう」に必要不可欠な月桃の葉は週に2回、300枚〜400枚ほど収穫するそう／画像提供：山城まんじゅう

大きさが約10cm、厚さ約1cm程のまんじゅうは、たくさんの月桃の葉を敷いて蒸し上げるので、ひと口食べると月桃の爽やかな香りが口いっぱいに広がります。材料は全て無添加無農薬、体に優しい素朴な味わいのまんじゅうです。

【山城まんじゅう】
住所：沖縄県那覇市首里真和志町1-58
電話：098-884-2343
営業時間：10:30～売り切れ次第終了
定休日：月曜、木曜

酒蔵の町・首里ならではの逸品「首里まんじゅう」

3つ目は、首里城公園から徒歩2分程の所にある「中村製菓」が手掛ける「首里まんじゅう」です。こちらの店舗は創業60年以上の老舗の製菓店。店主の中村盛賢（なかむら・せいけん）さんが2003年のゆいレール開通を記念して考案しました。

ポイントは、生地に泡盛を練り込んであること。首里は琉球王朝時代から現在まで酒蔵の町として栄えてきたことに着目し、中村さんは「首里らしい品にしたい」「作るからには沖縄の素材を使った品にしたい」と泡盛を使いました。

製作過程では蒸し上げる際に泡盛の香りが強く出てしまったり、焼き印のマークが決まらなかったりと、苦戦続きで完成までに3年を費やしたそうで、中村さんは「首里まんじゅう」を“自分の子供のよう”と話します。その甲斐あって、2008年には全国菓子大博覧会で名誉総裁賞を受賞し、沖縄はもちろん、全国からも注文が入る人気商品となりました。

泡盛を練り込み、酵母を使って蒸し上げている「首里まんじゅう」は、とにかく生地がふわふわ。島マースのほのかな塩味もあるので、あんこの甘さとよく合います。大きさも女性や子供にちょうどいいサイズですが、甘いもの好きはもう一つ食べたくなってしまうかもしれません。