美しいサンゴが真っ白に!? 今沖縄の海で起きていること<前編>

白化が進む沖縄のサンゴ/画像提供:環境省 国際サンゴ礁研究・モニタリングセンター

2022年8月、石垣島、宮古島などの先島諸島をはじめ沖縄県内各地で大規模なサンゴの白化(はっか)が進んでいることが各メディアで報道されました。

8月の時点で台風が全く接近しなかった先島諸島周辺は平均海面水温が過去40年で2番目に高く、30℃を越える日が続いた沖縄本島周辺の海は、平均海面水温が観測史上最高を記録。多くのサンゴが死んでしまうかもしれない深刻な事態となっています。

石西礁湖(せきせいしょうこ)の現況をマップにしたもの。赤色に見えている部分はサンゴが昔よりも減っていることを表しています/画像提供:環境省 国際サンゴ礁研究・モニタリングセンター

サンゴの白化は1998年頃から世界各地で確認されはじめ、2016年にはエルニーニョ現象の影響で、日本で一番大きいサンゴ礁とされる八重山諸島の石西礁湖(せきせいしょうこ)やグレートバリアリーフで世界的にも大規模な白化現象が見られました。

約10年ごとに世界各地で大規模な白化現象が起こっていますが、今年に入り石西礁湖で確認された白化は、2016年の様子に似ているとされ、前回の大規模白化から6年しか経っていない回復途中のサンゴ礁にとっては予断を許さない状況です。

言葉はよく耳にすることがあっても、意外と知られていない白化のメカニズムや、私たちにもできる対策などについて、沖縄・石垣市の国際サンゴ礁研究・モニタリングセンター内にある石垣自然保護官事務所・自然保護官補佐の江川博子さんに詳しく教えていただきました。

色とりどりのサンゴが真っ白になってしまう「白化」とは?

共存共栄の関係にある褐虫藻とサンゴ/©OCVB

一見、植物のような姿をしているサンゴですが、イソギンチャクやクラゲなどと同じ仲間の刺胞(しほう)動物で、「ポリプ」と呼ばれる小さな個体がいくつも集まって全体を形成しています。「ポリプ」が群体を作り、テーブル型や枝状のサンゴの形になっていきます。

さらに、健康なサンゴの体内には「褐虫藻(かっちゅうそう)」という無数の植物プランクトンが入っていて、褐虫藻はサンゴをすみかにしながら光合成で作った栄養をサンゴに与えています。褐虫藻が光合成によって作る栄養は生産性が高く、「ポリプ」が数mm~数cmととても小さい割に、サンゴが早く成長するのはそのためです。

ポリプ(サンゴ個体)が集まりテーブル型や枝状のサンゴを形成します/画像提供:環境省 国際サンゴ礁研究・モニタリングセンター

サンゴの白化とはその名の通り、サンゴが弱って色を失い白くなってしまうことです。健康なサンゴは色とりどりでカラフルに見えますが、これは体内に蛍光色素を持っていることと茶色の褐虫藻が関係しています。

白い骨格の上にあるサンゴの体の色は透明で、茶色の褐虫藻や蛍光色素が色として見えています。含まれる蛍光色素には褐虫藻にとっての有害な紫外線を吸収する日焼け止めのような性質があり、吸収する光の波長によって青や赤、緑などさまざまな色を発します。海中のサンゴが多彩な色に見えるのはこのためです。

ですが、海水温や気温など環境が適切(最適温度は25~29℃)でないと褐虫藻は光合成できません。特に海水温が高い場合は体内の葉緑体が壊れ、活性酸素(サンゴにとって毒になる物質)が発生するので、サンゴが褐虫藻を吐き出したり消化すると考えられています。褐虫藻が抜けたサンゴは骨格が透けて真っ白に見えることから、この状態を白化と呼んでいます。

サンゴの白化の要因は? どうしたら防ぐことができるの?

白化により色を失っていくサンゴ/画像提供:環境省 国際サンゴ礁研究・モニタリングセンター

サンゴが白化していると聞くと、“もう死んでしまったのでは!?”と考えてしまうかもしれませんが、白くなっているのはサンゴが弱っている状態で、まだ死んではいません。

環境が戻るまでが短い期間であれば、サンゴは動物プランクトンを捕食してしのぐことができ、一度白化しても死滅する前に海水温が適温に戻れば、褐虫藻がサンゴの体内に戻り、復活する可能性もあるそうです。ですが、白化の要因としては、

・地球温暖化やエルニーニョ現象などによる海水温の上昇
・異常気象による大雨などで川が流れ込み海水の塩分濃度が下がる
・陸上からの排水に含まれる農薬や化学肥料、生活排水などによる水質汚染や海の富栄養化
・森林伐採や開発などによる海への赤土の流れ込み
・ゴミ問題(マイクロプラスチックをサンゴが食べてしまうことも確認されている)

などが挙げられていて、人々の生活が間接的に海の中の環境を変え、サンゴのストレスとなっていることが分かっています。

江川さんによると、サンゴにも回復能力はもちろんありますが、このようにストレスがいくつも重なってしまうと大きく回復するのは難しく、元の状態に戻るには長い年月がかかるとのこと。

1カ月以上白化が続くと褐虫藻からの栄養がなくなり、サンゴは死んでしまい、2016年に石西礁湖で大規模白化が起きた際は、全体の97%のサンゴが白化、その後70%が死滅してしまったそうです。

海洋プラスチックやごみ問題もサンゴの白化に影響しています ※画像はイメージ

では、2016年と同じ事態にならないよう、サンゴの白化を防ぐには、死滅してしまった場所に再生させるにはどうすればいいのでしょうか? 後編では、白化の要因(ストレス)を取り除くために、私たちに何ができるかを考えます。

サンゴが自然や人々もたらしている恩恵や役割についても深掘りし、国際サンゴ礁研究・モニタリングセンターをはじめ、各団体による取り組みなどを紹介します。

※本文中の「サンゴ」は「サンゴ礁を作る造礁サンゴ」を指しています

参考サイト:環境省 国際サンゴ礁研究・モニタリングセンター石西礁湖ポータルウェブサイト


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