開発・製造ストーリー

製品の企画・開発・試作・テストなどを担う。
スケジュール管理まで幅広く担当。製造に関する全体を管理。
(大城)リニューアルの方針として最初にあったのは、ドラフトならではの「飲みやすさは変えない」ということでした。60年間、県民の嗜好に合わせて造り続けられてきたドラフトなので、そこは守り抜こうと。その飲みやすさも、”沖縄らしいビール”のあり方だと確信していたからです。
そのうえで今回は、ビールらしい味わいをより高めるために、オリオンでしか使用できない伊江島産の大麦を使用し、人の手と時間をかけて丁寧に造りあげた結果、「OKINAWA’s CRAFT」といえる独自性のある味わいが出来上がりました。
(照屋)これまで、弊社におけるビールの原料といえば、海外や県外産が主でした。そのなかで、”沖縄らしいビール”をこころざし、伊江島産の大麦を使ってザ・ドラフトへとリニューアルできたことは、すごくチャレンジングなことだと思います。
今までにも県産の果実などを使うアイディアはありましたが、大麦をはじめとする穀物などは、外から買うのがあたりまえだと思っていただけに、僕自身も原料に対する意識が大きく変わりました。
僕ら造る者にとっても、ザ・ドラフトの開発は、「沖縄」の魅力と可能性の再発見となっています。
また、原料を調達する役目から、伊江島の農家さんとお話する機会も多く、大麦のことをはじめ原料を作る現場の声や思い、苦労などにも触れ、いろんなことを学ばせていただきました。ザ・ドラフトの製造のみならず、ビールづくりをするうえでも、大変良い経験になりました。
(照屋)実際に製造となるまでは、おもしろい取り組み、今までにない取り組みだとワクワク感もありましたが・・・・今回は、オリオンビールのフラッグシップビールでもあるドラフトのリニューアルというニュース性に加え、”伊江島産大麦を使用”という初の製法にも内外からの期待が高まり、重責を感じつつも発売日にちゃんと、店頭でお客様のもとに届けられたことがいちばんの達成感になっています。嬉しさよりも安堵感の方が大きかったですね(笑)。
(大城)ザ・ドラフトの「澄み」は『澄み切った飲みやすさ』を表し、「旨み」は伊江島産大麦を使用したことによる『コク』のようなものを意味しているのですが、この2つはそもそも相反するものなんです。
すごくわかりやすく言うと、飲みやすさは「すっきり」。旨みやコクは「厚み・重み」です。
そんな矛盾するような2つの条件を前にして、どちらか一方ではなく、「両方ともちゃんと感じられる」「最上のバランス」を実現したい、いや実現するんだ!となったわけですから、開発部一丸となった新たな挑戦が始まりました。
いくつもの試作品を作っては官能評価を繰り返し、ディスカッションを重ねました。そのなかで、ビールづくりの経験から「長期熟成」の発想に至ったのです。ドラフトの製造に長期熟成を採用するのも初めてのことです。
(大城)ビールは熟成期間が長いほど、雑味のないすっきりした味わいになります。そこで経験豊富な醸造スタッフを交えて吟味し、ドラフトよりも1.2倍の長期熟成を決めました。
澄んでよりクリアになったぶん、大麦による旨みが引き立ち、味のピークが際立ちます。まさにエッジの効いた、絶妙なメリハリ。ザ・ドラフトが生まれた瞬間です。
しかも、澄みきったうまさの根本には、やんばるの森のきれいで美味しい水の輝きがあります。
ひと口飲んですぐにわかる、これまでのドラフトとの違い。けれどもドラフトならではの「飲みやすさ」というDNAはちゃんと受け継いでいる。
目指すバランスにたどり着いたときには、スタッフ全員が「これだな」と納得し、試作モデルの完成となりました。
(照屋)開発部から試作モデルを受けた製造部の第一印象は、「素晴らしい」のひと言でした。今回の開発が決して容易でないことは、僕らもよく知っています。だからこそ、この味をプラントでもしっかりと再現できるよう全力で取り組もう、開発部から受け継いだバトンを大切にしようと、試作時の4万倍もある実機にて、生産に向けての試験を繰り返しました。
通常は、温度調整、原料の量、麦芽を投入するタイミングなどはすべて数値化・自動化されていますが、今回は開発部が完成させた「あの味」を再現するために、現場のオペレーターが実測し、適確なポイントとタイミングを見極めながら、麦芽の投入から人の手で行いました。そういう意味では、まさにクラフト的です。
今回は、製造部としても初の試みが多く、難しさを感じることが多々ありました。ですが、その倍以上にやりがいを感じています。
今、ザ・ドラフトの”命”は、製造側に委ねられています。
いつ飲んでも美味しいよね、と言われる「品質維持」と、欲しい時にはいつもそこにある「安定供給」が僕らの新たなミッション。
製造部の全力投球はまだまだ続きます!
(照屋)ザ・ドラフトは、ドラフトらしい「飲みやすさ」、『澄み』に洗練をかけるために、長期熟成を行っています。そんな「澄み」のおいしさをいちばんに感じられるのが、0℃~4℃でしっかり冷やした状態。これは、開発部において、いろんな温度で飲み比べた調査結果でもあります。なので間違いありません!(笑)
キンキンに冷やすと、まず「澄み」がきて、やがてエッジの効いたコクのある「旨み」がしっかりと感じられます。
飲み飽きないメリハリのある、ザ・ドラフトの真骨頂を存分にお楽しみください。
(大城)僕はビールは楽しいお酒だと思っていて、世界中で楽しまれているビアスタイルの数だけお客様へ笑顔を提供していくことを開発の目標にしています。伊江島の農家さんや僕らが夢みる100%沖縄産原料のビールも、決して不可能ではない。今回の開発を未来のビールづくりにつないでいきたいと思います。
(照屋)ザ・ドラフトのように、うちの他のビールにも県産の素材を取り込んで「沖縄らしさ」を広げていきたいですね。世界的なビールづくりでも原料の多様性が、新たな潮流になっています。ここに来ないと飲めないビールなどを提案し、沖縄ならではの楽しみをもっと増やしたい。夢は尽きません。